Jewels of Nostalgia

Voigtlander Vito II
Voigtlander Color Skopar F3.5/50mm
Compur-Rapid B,1sec. - 1/500sec.
1950, Made in Germany


モーツァルトの生誕年、1756年にウィーンに創業したフォクトレンダーは、業界屈指の伝統を誇る光学機器メーカーである。創業当時、眼鏡・測量機器などを製作していたフォクトレンダー社は、1839年に世界初のカメラがフランスで発売されると、その翌年には独自の総金属製カメラを完成させ、1841年から発売を開始している。
その後、フォクトレンダーは、本拠地をウィーンからブラウンシュヴァイクへと移転、カメラ、写真用レンズ、双眼鏡、顕微鏡など様々な光学機器を発売し、総合光学機器メーカーとして発展していった。
第一次世界大戦後は、カメラ・写真用レンズの専業メーカーとなり、「ヘリアー」、「スコパー」などの銘玉を製造、また、「プロミネント」、「ベッサ」などの連動距離計式フォールディングカメラの名機を発売、その堅牢で緻密なメカニズムと自社製レンズの描写性能の高さで、フォクトレンダーの評価を確固たるものにしたのである。

この Vito II は、1950年、フォクトレンダーが発売した新製品群の中のひとつであり、戦前の Vito を改良したものである。軍艦部は曲線を活かしたシンメントリカルな美しいもので、6x9版の Bessa II の縮小版と云って良い。
それにしても優美なデザインである。曲線と直線の調和が見事である。蛇腹のタスキ、レンズ前蓋にいたるまで、微妙な曲線でまとめられているのには感心する。1950年代にアールヌーボー、アールデコでもあるまいが、欧州文化の懐の深さを感じさせるカメラである。

操作感はすこぶる軽快、滑らかであると同時にしっかりとしており、動作のひとつひとつが手に馴染む。とても製造後50年を経たカメラとは思えない。ファインダーも見やすく、Vito II での撮影は楽しい。


このカラースコパーは、3群4枚のテッサータイプのレンズで、戦前のスコパーの改良版である。前玉・後玉とも見事なコーティングが施されている。
鮮やかな発色、色抜けが良くクリアなコントラスト、抜群のシャープネスと解像感、発売当時から評判の高いレンズであるが、現代でも立派に通用する描写力である。いささか硬調でボケ味が今ひとつとはいえ、カメラ史に残るレンズであることは間違いない。
なお、フォーカシングは前玉回転によるものである。

丁寧な仕上げを見せる軍艦部。
一見フラットに見える軍艦部も、よく見ると、コーナーが面取りしてあったり、リワインドレバー収納用のへこみがあったり、内部機構収納用の膨らみがあったりと、かなり細かい仕事が施してある。

シャッターレリーズボタンはボディ本体ではなく、前蓋に付いている。決して押しやすい訳ではないが、不思議と手ブレは少ない。このレリーズボタンは前蓋格納時には自動的に引き込むという芸の細かさである。

前蓋を閉めた状態。
多くのフォールディングカメラが四角く厳つい前蓋を備えているのに比べ(それが嫌いというわけではない。)、緩やかな曲線で形作られた Vito II の前蓋は優美である。

どちらかと云うと厳ついカメラが多いフォクトレンダーの中、柔らかく洗練されたデザインであり、ゲルマンデザインというより、どこかフランス的エスプリを感じさせる。




実写例

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