Jewels of Nostalgia

Certo Dollina I
Steinheil Cassar F2.9/50mm
Compur TB,1sec. - 1/300sec.
1937, Made in Germany


ツェルト社は、アルフレッド・リッパート、カール・ペペルによって、1902年、旧東ドイツ・ドレスデンに創業したカメラメーカーである。各種ボックスカメラ・フォールディングカメラを手がけた中堅メーカーであるが、個性的な35mm版フォールディングカメラ・ドリナシリーズを開発したメーカーとしても知られている。

一連のドリナシリーズの最大の特徴は、ボディ側フォーカシングノブの回転により、蛇腹のタスキを駆動し、レンズボードを前後に動かしてフォーカシングを行なうという機構にある。これは、設計のごく初期の段階から、距離計連動式フォーカシングを目指していたと思われる機構である。

この Dollina I の場合は、軍艦部中央のフォーカシングノブを回転することで、レンズボードを前後させている。

ドリナシリーズは、1930〜1950年代にわたって各種のモデルが作られたが、ごく初期のモデルを除いて、ボディ側フォーカシングノブ回転〜レンズボード前後移動という機構は基本的には変化していない。各モデルの特徴は以下のとおりである。
  1. Dollina 0
    ボディ側フォーカシングノブを持たないモデルである。フォーカシングは前玉回転によって行なう。距離計無し。

  2. Dollina I
    初めてのノブ回転によるレンズボード前後移動フォーカシングモデル。距離計無し。フォーカシングは軍艦部ノブによって行なう。このページのモデルである。

  3. Dollina II
    Dollina I の軍艦部に連動距離計を載せたモデル。無理矢理、距離計を載せたような無骨な二階建デザインであるが、この無理矢理さが楽しいモデルである。

  4. Dollina III
    Dollina II の連動距離計を軍艦部内に納めたモデル。前蓋を薄くした代わりに蛇腹開口部が分厚くなっており、歴代ドリナの中では、やや大柄なモデルである。

  5. Super Dollina I
    軍艦部からボディ右側・巻上げノブ後部にフォーカシングノブを移行し、フォーカシング時のホールディングを向上させたモデル。ここまでが戦前モデルである。

  6. Super Dollina II
    Super Dollina I の軍艦部デザインをリニューアルし、モダンな外観となったモデル。機構的には、Super Dollina I とほとんど変わらない。1950年代東ドイツVEB公社製。

  7. Durata
    Super Dollina II の姉妹モデル。1950年代東ドイツVEB公社製。Super Dollina II から連動距離計機構を省き、前玉回転フォーカシングにした廉価版である。


連動距離計付ドリナには、クセノン、テッサーなどのレンズが付いているが、この機体に付いているのは、三群三枚のトリプレット、シュタインハイル・カッサーである。
Welta Weltix と同じレンズであるが、若干、こちらのほうがコントラストが良い。直接前玉を回転させる Weltix に比べ、前玉に触れることなくフォーカシングできるドリナの場合、多少はレンズの保存状態が良いのかもしれない。
シャープネスに関しても、全群移動のためか、前玉回転の Weltix より、やや良い印象を受ける。

アクセサリーシュー斜め前方がフィルムカウンターである。
フィルムカウンター前方のバーには、フィルムリリースボタン兼フィルムカウンターリセットボタンが付いている。
カウンターリセット時には、バー右端のレバーを引き出し、ボタンを前後にスライドさせることで任意の数値にカウンターをセットする。
撮影時にはバー右端のレバーを格納し、フィルムリリースボタンを押してからフィルムを巻き上げる。
バー左端の上向きボタンは、前蓋開放ボタンである。

ボディは肉厚堅牢なダイキャスト製である。黒光りする重厚な姿は、蒸気機関車を思い起こさせる。
スプロケットは4本爪の細いもので、フィルムパーフォレーションの一部をくわえ込ませる独自の機構である。若干頼りないが、フィルム給装は非常にスムーズである。

ドリナの前蓋は単なるカバーではなく、レンズボードを垂直に支え、スムーズに前後移動させるという重要な役割を果たしているが、丸く盛り上がった外形は、なかなかに可愛らしい。
前蓋中央には、"Certo Dollina" のエンボスが刻まれている。

黒く厳ついボディに相反して、ノブ類やトリム類はニッケルメッキの優しく暖かな輝きを放ち、ある種の典雅ささえ漂わせている。
西ヨーロッパと云うよりは中央ヨーロッパの伝統を感じさせる重厚な美しいカメラである。




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実写例
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